建設業の地位の承継(事業譲渡・合併・分割など)
建設業許可の承継制度とは、通常、建設業許可を取得するには必要な要件を満たし、申請書類を整えて申請しなければならないものです。しかし、この「承継制度」を活用することで、他社が持っている建設業許可を引き継ぐことができる仕組みとなっています。
事業を譲渡する際にあらかじめ認可を受けておけば、無許可期間を1日も設けることなく、建設業許可が引き継がれます。
ただし、この認可を受けるためには、譲り受ける会社が建設業許可を取得するための条件を満たしていることが求められます。
さらに、建設業者としての立場を引き継ぐことになるため、過去の行政処分や経営事項審査の評価も一緒に引き継がれる点に注意が必要です。
承継制度のパターンの例
・個人事業主が法人成りして承継する
建設業許可を持つ個人事業主が、業務拡大などを理由に法人化するケースです。
これまでは、個人事業としての建設業許可を一度廃業し、新たに法人として許可を取り直す必要がありました。
しかし、この方法には大きなデメリットがあります。具体的には、個人事業を廃業してから法人の許可が取得できるまでの間、無許可業者となってしまい、その期間中は500万円以上の工事を請け負うことができません。
そこで、事業承継の制度を活用すれば、許可の空白期間を生じさせることなく、法人化後も引き続き500万円以上の工事を請け負うことが可能になります。
・許可業者→建設業許可の無許可業者へ承継する
建設業許可を持っていない業者が、建設業許可を持つ業者から事業を引き継ぐケースです。
この場合、法人の一部または全部を吸収合併する形で事業承継が行われることが想定されます。また、複数の建設業者を同時に吸収合併することも可能です。しかし、複数の業者を合併する場合には、いくつかの条件があるため、注意が必要です。
・建設業許可の許可業者→建設業許可の許可業者へ承継する
承継する事業者と承継される事業者の両方が建設業許可を受けている場合です。
この場合、業種が一致していないことが条件となる場合もあります。
また、承継後は常勤役員や経営業務の管理責任者、専任技術者などの配置について調整が必要となります。
建設業許可の事業承継の流れ
建設業許可の事業承継を進める際の主な流れは、以下の通りです。
1.事前相談
まず初めに「事前相談」を行います。事業承継を進める前に、担当窓口と直接相談し、どのような形で承継を行うのか、また承継予定日などの基本情報をもとに、スケジュールを調整します。
2.申請書提出(窓口審査)
次に、必要書類を整えて申請を行います。申請書類と証明書類をすべて準備して提出します。提出期限ギリギリで申請すると、書類に不備があった場合、結果的に承継日を変更しなければならない可能性があるので、できるだけ早めに提出することが重要です。
3.受付
必要書類が全て揃い、内容に問題がなければ、申請は受付されます。
4.審査
行政機関で内部審査が行われます。
5.認可および通知書送付
審査が完了すると、申請者に「建設業法に基づく譲渡および譲受けの認可通知」が送付されます。この通知には、建設業許可番号や有効期間、許可日、業種などが記載されており、建設業許可証に相当します。承継後の許可の有効期間は通常の5年に1日が加算され、その「建設業許可日」は事業承継の翌日となります。
6.後日提出書類の提出
最後に、申請時に準備できなかった書類を後日提出します。たとえば、法人新設に伴う会社の登記簿謄本や社会保険関係書類などが該当します。
ただし、後日提出する資料は、準備に時間がかかったり、提出忘れがあった場合に限られるため、事前に必要な書類をしっかりと確認し、早めに準備することが大切です。
この制度はあまり一般的ではなく、必要な書類も多いため、手続きが複雑になりがちです。
手続きでのミスや遅れを避けるために、建設業許可の承継制度を利用したいと考えている方や、利用できるかどうか不安な方は、建設業許可に詳しい行政書士に相談することをおすすめします。